知っていましたか、1歳未満の子ははちみつを食べてはいけません。
最近ニュースでも上がったくらいなので、日本でも厚生労働省などが注意喚起をしているのが記憶に新しいのでは無いでしょうか。
でも、なぜいけないのか、ご存知ですか?
それは、はちみつに入ってしまう可能性があるボツリヌス菌という菌が深く関わっています。
ここでは、はちみつとボツリヌス菌についての関係、ボツリヌス菌が含まれるその他の食べ物、そしてどのタイミングからはちみつを幼児に与えて良いのかまで全てご紹介します。
厚生労働省や日本感染症学会などに掲載されている公式の内容も参考にしていますので、これってホントなの?という疑問についても調べることができるようになっています。
はちみつについて詳しくなって、お子さんにとって良いタイミングではちみつにチャレンジしていきましょう。
目次
1、記憶に新しい、幼児にはちみつを与えて死亡してしまった事件
はちみつを食べてしまったことが原因で乳児が亡くなるという、悲しいニュースが記憶に新しい方も多いと思います。
蜂蜜入りの離乳食を与えられていた生後6カ月の男児が亡くなった。
東京都によると、亡くなったのは足立区の男児。生後4カ月ごろから、市販のジュースに蜂蜜を混ぜて1日2回、約10グラム与えられていた。2月20日にけいれんや呼吸不全などの神経症状が出て入院。ボツリヌス菌が原因の「乳児ボツリヌス症」と診断され、3月末に亡くなった。
参考URL:朝日新聞 – 蜂蜜食べ乳児ボツリヌス症で死亡 危険な食品、ほかにも(http://www.asahi.com/articles/ASK4B5FGMK4BUTIL03X.html )
実は統計1986年以降、乳児ボツリヌス症による死亡例は全国で初めてでした。
参考URL:日本経済新聞 – 乳児ボツリヌス症で初の死亡例 ハチミツ与える (http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG07HFV_X00C17A4CC1000/ )
育児書などには、「はちみつ」は小さいお子さんには与えないようにと書いてあるものの、意外に「知らなかった!」という方もいるようで、実際インターネット上ではちみつを使った離乳食レシピなども掲載されています。
2、なぜ1歳未満の乳児にはちみつを与えてはいけないのか?
(1)赤ちゃんははちみつに含まれているボツリヌス菌に耐性が無いからです
なぜ1歳未満の子にはちみつを与えてはいけないのでしょうか。乳児は、はちみつにふくまれるボツリヌス菌に耐性をもっていません。
1歳以上の幼児が持っていて、1歳未満の乳児が持っていないもの、それがボツリヌス菌への耐性です。
(2)ボツリヌス菌が含まれているはちみつを与えてしまうと?
1歳未満の乳児にはちみつを与えてしまうと、はちみつに含まれているボツリヌス菌に感染します。
ボツリヌス菌に感染すると、菌が腸内で増殖を始めてしまいます。
①ボツリヌス菌の増殖と、出す毒素が危険!
ボツリヌス菌が腸内で増殖してしまうと、毒素が身体を攻撃します。
ボツリヌス菌の出す毒素は強力で、菌が増殖している食べ物を食べてしまうと成人でも食中毒になってしまうほどなのです。
それが体内で増殖して生成されてしまうので、良くないことになりそうなのは明らかです。
(3)ボツリヌス菌への耐性は1歳頃から確立する
ボツリヌス菌に対する免疫力はだいたい1歳頃に確立すると言われています。
これが1歳までは、はちみつを与えてはいけないと言われている理由です。
なぜ1歳以降になるとはちみつを食べてもよくなるのでしょうか。
これは諸説あるようですが、一説では離乳しはじめてから幼児期に入る際に常在細菌の比率が安定するからだと言われています。(*1)
離乳を始めて、だいたい生後8ヶ月頃から腸内の細菌が整い始め、成人と同じ比率の菌比率で腸内細菌が安定し始めます。
腸内の常在細菌が安定し始めると、ボツリヌス菌は他の腸内細菌との競争で負けてしまい、増殖ができないので何も起こらなくなるということです。(*2)
*1…大塚製薬 – 加齢による腸内細菌の変化(http://www.otsuka.co.jp/health_illness/fiber/for_body/main_fiber/ )
*2…厚生労働省 – はちみつを与えるのは1歳を過ぎてから (http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000161404.pdf )
(4)ボツリヌス菌は強いため、自宅での殺菌処理は難しい
はちみつに含まれているこのボツリヌス菌、殺菌処理は家庭では非常に難しいと言われています。
毒素は100度で10分間加熱することによって無毒化することができる(*1)のですが、幼児とボツリヌス菌で問題になるのは菌自体の増殖です。菌自体を殺さなければ増殖して毒素を発生させてしまうため、こちらを取り除けなければ殺菌する意味がありません。
しかし、ボツリヌス菌自体を取り除くのは難しいのです。ボツリヌス菌は芽胞と呼ばれる殻に包まれた状態に変化することができ、この状態には耐熱性があります。
最も強い型のボツリヌス菌を殺菌するためには100度よりも更に高温の120度で4分間加熱し続ける必要があります。(*1)
家庭内でこの温度の殺菌を行うことは難しいので、ボツリヌス菌が含まれていそうなものを与えないようにする必要があります。
*1…国際感染症研究所 – ボツリヌス症より (https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/botulism121207.pdf )
(5)国内国外のはちみつ全てに含まれている可能性があるので、産地やメーカーを選択して与えることも難しい
はちみつは栄養もありそうだし、ボツリヌス菌が含まれていないはちみつはないのでしょうか?
結論から言うと、「ボツリヌス菌が含まれていないはちみつ」を探すのは現実的ではありません。
ボツリヌス菌は世界中のありとらゆる自然界の水や土に含まれており、どの産地のどのはちみつにも混入する可能性があります。
仮にある産地のはちみつにボツリヌス菌が含まれていなかったとしましょう。そこで、「この産地のはちみつにはボツリヌス菌が含まれていなかった!この産地のはちみつは幼児にあげても安全だ!」とは言えないのです。
同じ産地の別に期間に採取したはちみつには含まれてしまっている可能性は大いにあるのです。これは実際に研究によって証明されています。
参考URL:乳児ボツリヌス症の原因食品に関する調査ハチミツのボツリヌス菌汚染について(http://www.pref.chiba.lg.jp/eiken/eiseikenkyuu/kennkyuuhoukoku/documents/11-p39.pdf)
3、ボツリヌス菌が含まれている可能性がある食品
(1)はちみつ・はちみつが含まれている食品
厚生労働省でも発表されているとおり、はちみつにはボツリヌス菌が含まれている可能性があります。
ボツリヌス菌は、状態によっては耐熱性があり、非常に高い温度で滅菌しなければ死滅させることができません。そのため、はちみつ単体だけでなくはちみつが含まれている商品にも気をつけなければなりません。
今回ははちみつが混ざっていた野菜ジュースから感染してしまったそうです。
具体的にどのような食品にはちみつが含まれているのでしょうか?
例えば、
市販のパン(一部)
市販の乳児向けではないドリンク
お菓子(クッキーやグミなど)
カステラなどです。
ここで列挙したのは一部ですがかなりの食品が当てはまると思います。
製法がそれぞれことなるので、過程でボツリヌス菌が殺菌されている可能性もありますが、裏面を見てみて、原材料表記にはちみつが記載されている場合は基本的に避けたほうが良いでしょう。
幼児向けと書かれていない製品には健康や栄養が豊富などと謳っていたとしても幼児が摂取する前提で作られていない可能性があります。
その食品に何が含まれているかの表記を必ず注意するようにしましょう。
参考URL:公益社団法人 日本小児科学会- 【会員向け提言】蜂蜜による乳児ボツリヌス症の発症について(https://www.jpeds.or.jp/modules/news/index.php?content_id=266 )
(2)コーンシロップは現代の製法上でボツリヌス菌を取り除くことが可能?
検索するとコーンシロップにもボツリヌス菌が含まれてしまう可能性があると言われているようでした。
コーンシロップは現代では海外、特に米国産が主流なので米国のサイトを確認してみると、どうやら1982年にボツリヌス菌が発見されてから製法を改変したようです。
その後1991年に738個もの様々なコーンシロップサンプルをFDA(アメリカ食品医薬品局・日本で言う厚生労働省)が確認したところ、ボツリヌス菌が含まれているコーンシロップは0個でした。
過去には混合してしまっていた可能性はありましたが、指摘されて製法から改変されているのでボツリヌス菌が含まれている可能性は現代では低いのではないかと考えられます。
参考URL:http://www.infantbotulism.org/parent/prevention.php
(3)甘味料だけじゃない!井戸水にもボツリヌス菌が含まれる可能性有り!
ボツリヌス菌は全世界の自然界の水や土壌に存在しています。井戸水にボツリヌス菌が含まれている可能性は大いにあります。
事実、井戸水が原因とみられる幼児のボツリヌス症発症例も存在しています。
井戸水を使用した料理や調理などには注意が必要です。
参考URL:国内感染症研究所 – 乳児ボツリヌス症の発生原因と考えられた井戸水からの菌分離(http://idsc.nih.go.jp/iasr/28/326/kj3261.html )
(4)黒糖や白糖はやめたほうがいい?
黒糖は製造過程の中に120度以上の高温で4分以上煮詰める工程が存在するようです。この段階でボツリヌス菌は熱耐性のある芽胞まで殺菌することが可能です。
現状厚生労働省などで強く喚起されている食品ははちみつだけなので、「黒糖も食べさせてはいけない」という説はもしかしたら噂話が発症元のデマなのかもしれません。
参考URL:くらしトピック – 徹底調査!乳児は絶対NGな「ボツリヌス菌」。ハチミツ以外の危険食品の真偽とは?!(https://kurashi-no-topic.com/childcare/7500/2/ )
白糖は今度逆に120度以上で煮詰めることはありません。そうなってくるとボツリヌス菌の芽胞は殺菌することができません。
しかし、白糖は過程で何度も濾過を行うため、その工程でボツリヌス菌含む菌類は除去することができるようです。
①1歳までは砂糖を与えず、素材そのものの自然の味付けだけで大丈夫!
それまで母乳しか飲んでなかったあかちゃんにとって、離乳期から1歳までは素材そのものの味だけでも赤ちゃんにとっては十分濃い味です。
調味料で味付けを行うのはもう少し先で大丈夫。
(5)その他のボツリヌス菌が含まれている可能性がある食品は?
その他にボツリヌス菌が含まれている可能性がある食品は下記のようなものが挙げられます。
瓶詰め商品
缶詰商品
レトルト系食品
ボツリヌス菌は酸素がないところを好む菌類です。密封容器などは増殖に最適な環境なのです。
滅菌処理がきちんとされているものであれば問題ないのですが、産地などによってはこれらが不十分なものや、幼児のことを考えずに製造されている場合があります。
乳児や幼児向けのものではないこれらの食品を与える場合は注意しましょう。
4、乳児ボツリヌス症について知る
腸内環境が未発達の幼児が、はちみつなどに含まれるボツリヌス菌を摂取してしまうことによって発症する乳児ボツリヌス症について詳しく知りましょう。
ここでは、NIID国立感染症研究所(https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/7275-botulinum-intro.html )に記載されている乳児ボツリヌス症について、わかりやすくまとめてご紹介していきます。
(1)乳児ボツリヌス症とは
乳児ボツリヌス症とは、まだ消化器官が発達しきっていない幼児がボツリヌス菌を摂取してしまったときに起こる症状のことです。
成人であれば他の菌類との競争に負けてしまうボツリヌス菌ですが、幼児の発達しきっていない腸内環境では逆に増殖してしまいます。
そしてこのボツリヌス菌が作る毒素によって身体を攻撃されてしまったときに起こる症状のことを乳児ボツリヌス症と呼ぶのです。
(2)乳児ボツリヌス症の症状
NIID国立感染症研究所では以下のようにまとめています。
長期間(3日以上)続く便秘
元気がない
おっぱいを飲まない
鳴き声が小さい
首がすわらない
腕や足を動かす力が弱まる(麻痺し始める)
特に長期間続く便秘で気づくことが多いそうです。
発症後治療すればそれ以降は悪くなることは基本的には無いそうです。
死亡率は米国では1%未満と報告されており、国内でも確認されている36症例中、冒頭で取り上げたケースが初めての死亡例だったそうです。
(3)乳児ボツリヌス症の治療方法は?
幼児への負担を考えて基本的には対症療法を行うそうです。
しかし、お子さんの症状や状態によってそれぞれケースバイケースで対処が異なるので、医者が判断されるようです。
発症してしまった場合はご自身で判断されずに、速やかに医療機関を受診することをおすすめします。
5、万が一はちみつを食べてしまったら?
万が一はちみつを食べてしまったら、まずは医者に相談しに行きましょう。
ボツリヌス菌の感染で怖いのは体内での増殖です。症状がでる前に医療機関で相談することをおすすめします。
ボツリヌス菌には潜伏期間があり、仮に感染してしまっていたとしても発症するまでに3日〜1ヶ月かかることもあるそうです。
お子さんの様子を見ながら、医者と相談して経過を診ましょう。
まとめ
幼児がはちみつを食べるときに知っておきたいことをご紹介していきました。
ボツリヌス菌は怖いですが、耐性がついた1歳以降であれば、はちみつは栄養が豊富な食べ物ですし、お子さんのお菓子などにも入っていて、食の幅が広がりますよね。
あれもこれもとならずに、ゆっくり焦らず挑戦していけば大丈夫。
定期検診の際にかかりつけ医と相談しながら新しい食にチャレンジしていきましょう。
趣味は薬膳料理とヨガ。
よく食べよく寝る元気いっぱいの息子(3歳)のママ。
かわいいけれどいつも足にまとわりついてくる甘えん坊の息子の将来が心配。
あと仕事と育児で毎日がいっぱいいっぱい。
きちんと料理や掃除をしたいのに家事の時間が確保できないのが悩み。